『フライト』 アルコールと嘘と飛行機事故

3月1日、金曜日、河原町にて。初日でした。通常なら間違いなく墜落していた飛行機を奇跡的に着陸させた機長のデンゼル・ワシントン。だが、事故後の血液検査で彼の体からアルコールとドラッグが検出される。なんと機長はアル中でジャンキーだったのだ!

デンゼル・ワシントン演じるウィトカー機長はつくづくダメな男である。もちろん、とっさに神がかり的フライトを成功させたのだから、パイロットとしては卓抜した才を持っているだろう。だがいざ飛行機を降りるとどうか。中年ぶとりのずんぐりした体。いい雰囲気のギャルには本能的にムラムラ。お酒がやめられない。クスリもやっちゃう。酔っぱらってしでかして自己嫌悪。特に物語を占めるのは、ウィトカー対アルコールの問題です。具体的な説明はされないが、元嫁に会いに行っただけで、年端もいかない実の息子からあの剣幕で追い出されるのだから、家庭内でも相当なトラブルのもとになっていたのだろう。映画における最大のスリルは、実は飛行機事故よりも、終盤質問会前での飲むのか?飲まないのか?というシークエンスであった。

人は大なり小なりなにかに依存しつつ、自分のなかのバランスを保っているのだと思います。それはお酒やお菓子だったりセックスだったり。けれども依存が過度になると、自分を省みる暇なく、それらに手を出してしまう。依存状態にあることからも目を背けてしまう。主人公の内省をめぐる物語を、アルコール依存をあわせ鏡とすることで、スリリングに描いていることに、映画的なおもしろさを感じました。