『世界にひとつのプレイブック』 ロマンスの神様、この人でしょうか

2月23日、土曜日、二条にて。素晴らしかったです!登場人物たちが話し、走り、ダンスする。スクリーンへと写し出される、それら動きのすべてが、笑みがこぼれるほどに眩く、泣いてしまいそうなほどに美しかった。鑑賞中は映画を観ていることの喜びを噛みしめていました。妻の浮気を目撃したことで躁うつ病になった男と、夫を亡くしたことで心にトラブルを抱えた女が出会う。

華のある俳優による神がかった演技と、撮影や音楽の使い方も含めたさりげなくもはっとさせる演出で、映画はこんなにも豊かさや新鮮さを持つことができるということを証明するような作品でした。まず、やはりヒロイン役のジェニファー・ローレンスについて言及せねばならないでしょう。表情、身のこなし、言葉の抑揚といった、演技面でのつねに斜め上を行くようなハイスコア連発に加え、身体的な説得力もすごい。『ウィンターズ・ボーン』『X-MEN ファースト・ジェネレーション』などで、かねてから魅了されてはいましたが、今作でとてつもない女優だなと再認識させられました。彼女がランニングに登場するシーンの鮮烈さといったら!また、彼女の圧倒的存在感とあえてバランスをとるかのように、主演でありながらやや身を引いて、繊細さと身勝手さの双方で少年のような佇まいを見せるブラッドリー・クーパーもすごく良かったです。彼の父親役のロバート・デ・ニーロ、母親役のジャッキー・ウィーバー、同じ病院の仲間であるクリス・タッカーといった演技巧者も、絶妙な温度の合わせ具合で、彼らのアンサンブルを眺めているだけで幸福な気持ちになりました。

ブラッドリー・クーパーの演じるパットにせよジェニファー・ローレンスによるティファニーにせよ登場当初は、ちょっとどうかと思うくらい観客が共感しづらいキャラクターとして映画内に登場するんですよね。自分も含め場内には明らかに、この映画大丈夫かなという戸惑いや不安なムードが漂っていました。にもかかわらず、いつの間にか観客の全てが「とにかくこの二人にはうまくいってほしい」と応援するモードに様変わりしてたんですよね。具体的な言葉でラブを表明するシーンは途中一度もないのに。ほんとうに些細な描写の積み重ねで、ロマンスが産み出されつつあることを観客に嗅ぎ取らせたのだと思います。まさに映画ならではの魔法が劇場全体をドライヴさせているのを肌で感じた2時間でした。最高でしたよ。