『フラッシュバックメモリーズ 3D』ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね

1月27日、日曜日、八条にて。ものすごくよかったです。3D映像、演奏される音楽、日記に綴られた文章、たまたま残っていた過去の記録。全てが、一人の男の記憶と再起をめぐる物語へと集約されていく。ディジュリドゥ奏者として人気を博すGOMAの半生を描く。

GOMAさんは、2009年に交通事故に遭い、記憶の多くを失う。記憶力にも障害が残り、これからのできごとも覚えづらくなってしまう。事故後にディジュリドゥを見たときそれが楽器だとさえわからなかったという。映画は、WWWで行われた彼のバンドのスタジオ・ライヴを軸に、記録に残っていた過去映像を使っての演奏家としての軌跡からスタートしては、ミュージシャンとして人として現在に立ち向かうGOMAさんの姿を浮き上がらせる。

やはり、特筆すべきは、現在と過去、ライヴというフィジカルなパフォーマンスと日記やアニメーションといったエモーショナルな発露といった異なる位相を、3Dを使い並立して映し出すという、音楽ドキュメンタリーとしての新しさでしょう。劇映画においても3Dをこうしたレイヤーとして使用した例は体験したことがなかったため、なるほどこういう手があったかとうなってしまった。

楽しい思い出も、美味しいご飯の味も、強く刻もうとした言葉も、人はいつしか忘れていくでしょう。けれども、ただ一つ、今生きていることだけが、過去に起こった出来事の証拠たりえるのではないか。同時にスクリーンに映る、今演奏しているGOMAさん、過去で笑うGOMAさん、言葉で記録されたGOMAさんの感情は、鑑賞するすべての人にとって等しく、今ここにいる自分の成り立ちそのものではないでしょうか。映像としての新鮮さがそのまま、生きているということついてのはっとした驚きと、生きてきたということの眩さへと結びついていた。素晴らしかったです。