『トールマン』 善き行いをめぐる問いかけ

1月18日、金曜日、七藝にて。予想のつかない展開に心からびっくりしました。まさか、こんな映画になるとは・・・。予告編を見ただけでは誰も想像さえできないのではないでしょうか。え!え!えー!!とにかく、とても驚いたのでした。

炭鉱が閉鎖され消滅を待つしかない町コールド・ロックでは、子供の失踪事件が多発していた。いつしかトールマンと呼ばれるようになった、謎の大男によって。そして、看護婦のジュリアの愛息もトールマンに連れ去られる。命からがら町のダイナーへと辿り着き、助けを求めるジュリアだったが、なにやらそこにいる町民たちにおかしな雰囲気を感じ・・・

できるかぎりネタバレを回避したいのでストーリーには触れないようにしますが、秘密をめぐるサスペンスかと思われた今作は、次第に善意を問う物語になっていきます。そして、物語の最後に観客は実際に質問されるのです。「これで正しかった・・・んだよね?ね?ね?」

僕自身はとしては、この質問を支える啓蒙的な思想には嫌悪感を覚えるし、問いかけにも全力でノーと答えたいと思った。劇中に描かれる""善き行い"は、やはり相当に独りよがりであり横暴である。なによりどう考えても効率が悪い。ゆえに話の展開としては、無茶もあるのだが、それでもなお、観客を巻き込み、その心情に揺らぎを与えるのは、全編を通じて、絵作りに品位があるからだろう。灰色がかった空気、不穏のそびえ立つ木々、それらが醸す閉塞感が、映画を切迫させていました。