『LOOPER ルーパー』ループをとじるのは誰だ?

1月12日、土曜日、二条にて。おもしろかったです。現在の選択が未来に及ぼす影響について思索をうながす作品でした。2074年の未来ではタイムマシンが発明され、犯罪組織は30年前にあたる2044年に消したい相手を送っては、ルーパーと呼ばれる殺し屋に手をくださせていた。ある日、若手ルーパーのジョーは仕事を遂行すべく、いつものように銃を構えていた。が、送られてきたのはなんと30年後の自分だった。

ふいをつかれてしまい、30年後の自分=オールド・ジョーに逃げられたヤング・ジョーは、標的を逃すと自らの命が組織に狙われるため、オールド・ジョーを殺そうと追いかける。が、オールド・ジョーには目的があった。それは、30年後に起こる愛妻の殺害を防ぐため、まだ子供である未来の組織の首領を、30年前に殺しておくことだった。つまり、ヤング・ジョーは現在の自分を救うため、オールド・ジョーは愛する人に起こりうる未来を変えるため、それぞれ2044年の世界で目的を果さんとします。

けれども、劇中で示されるように、オールド・ジョーは、ヤング・ジョーがタイムマシンで転送されてきた30年後の自分を、手際よくしとめた延長線にある未来のジョーの姿です。そして、未来というのは、現在の細かな選択が複雑に絡み合った果てに形成される、ありうる可能性の一つに過ぎないのではないでしょうか。例えば、今日のお昼をAのコンビニで買うかBのコンビニで買うか、どちらかを選ぶことは瑣末な選択ですが、やはりAを選んだ人生とBを選んだ人生では、筋道が変わってくるように思います。

しかるに、本来であればタイムワープ後直ちに殺されるはずであったオールド・ジョーを、始末しそこなってしまったヤング・ジョーのこれからの筋道は、2044年にいるオールド・ジョーからすでに逸れてしまっているのではないでしょうか。そもそも、30年後に待ち受ける最愛の人の死を防ぐのに、30年前選択しえるもっとも根本的な解決作は、ヤング・ジョーを抹殺し、自らと出会わなかった生を愛する人に歩ませることでしょう。そう考えると、自責の念から罪のない子供まで殺めようとするオールド・ジョーはやはり傲慢に思います。

一方で、当初は保身のためだけにオールド・ジョーを追いかけていたヤング・ジョーは、農地に暮らす母と息子に出会ったことで、人間的な暖かさや優しさを取り戻し、ある選択をします。それは、個人的な欲望や激情からではなく、世界をより良くするためのヴィジョンから生まれたものでした。着地点として唸ってしまうほど見事で、あとに映る青空ととうもろこし畑が醸す余韻もよかったです。