『サイド・バイ・サイド』 監督も撮影も編集もお客さんもみんな違ってみんなイイネ!

1月6日、日曜日、シネ・リーブル梅田にて。フィルムからデジタルカメラと、映画撮影の主流が移りゆく中で、キアヌ・リーヴスデヴィッド・フィンチャーロバート・ロドリゲスクリストファー・ノーランなど多くのフィルムメイカーや撮影スタッフに、デジタル化の潮流について問う。

特有の味わいを持つ画質や熟練の技術者による編集の妙など、これまでフィルムが築き上げてきた映画の魅力を振り返るとともに、デジタル・カメラの進化にともなう、映画制作の変化―長時間すっとカメラを回しておける、撮って即確認ができる、素人でも撮影できるなど―を説明してくれます。特に後者は、撮影、編集、カラリングと順序立てた解説で、映画製作の素人である僕のような人間にも、デジタル撮影のもたらした恩寵がわかりやすかったです。また、フィルムは一度現像しないと映像を確認することができないと知らなかったので、よくそれでやってこれたものだと驚くと同時に、確かにそれはデジタル世代の今の感覚だとやりづらいよなーと思いました。

映画自体がフィルムとデジタルのどちらかに寄ることない、卓抜したバランス感覚を持っているため、観客の側としては双方のメリット/デメリットをすんなり受け入れることができました。僕自身は、物見遊山な言い方ではありますが、作り手それぞれが望むフォーマットで、納得のいく作品を制作さえしてくればいいし、そうやって完成された妥協なき映画を全力で楽しみたいです。
 
今後さらにデジタル化が進むことで、フィルムはさらに稀少価値を増し、フィルム撮影での制作はいっそう敷居の高いものになってしまうのでしょうが、それ以上にデジタルカメラの発展により、フィルム時代にはありえなかったほど多くの人へと映画制作の門戸が開かれることに希望を感じます。劇中でもデジタル世代の代表といった扱いで取り上げられていたレナ・ダナムは、そんな新しい時代のフィルムメーカーの象徴だと思う。ポップ・ミュージック・シーンでも、DTMの低価格化/軽量化/高性能化が進んだことによって、世界中から若き持たざるベッドルーム・クリエイターがどんどん登場しています。それでも、アナログ録音を好むミュージシャンは老若問わず現れ、彼らは彼らで素晴らしい機材のもと豊かな作品を作っているわけで。その現状をふまえると楽観的過ぎるのかもしれませんが、やはり映画界からもフィルムがなくなることはそうないんじゃないかなと思います。

映画内では最後に言及されていた、デジタル化によって映画を鑑賞する環境の選択肢が増したこと。自分は映画はできるかぎり映画館で観たい派ですが、劇中で移されていた電車内でi-podを使って映画を見ている黒人男性の姿には、むしろ映画の未来についてのポジティヴさを感じました。あんなちっぽけな画面で見るなんて!と嘆くよりも、こんなに小さなデバイスでさえも見たいと思わせ、そして楽しませることにこそ、映画の持つしぶとい強さがあると思います。実際、見ている彼はほんとに楽しそうに、i-podをのぞきこんでいたんですから。